臆病者

僕はたまに 8 〜 12 メートルの生物を見るよ。

海の中にはジンベイザメやマッコウクジラがいるけれど僕は陸で。

街で道で夜でそこで。

今も。

暗くて闇みたいのがのそりといるの。

最初は怖くて電信柱の陰でこっそりと見ていたよ。

でも動かないの。

だから昼は太陽を浴びるように夜は闇を浴びている植物みたいなものだと思うことにしたよ。

まだ近づくのは怖いけれどもうびくっとするだけで怖くないよ。

でもそれの足元に車にひかれた猫がいるの。

血も枯れてぐてってしてる。

怖くないしそっと近づいて取ろうと思うんだけど足が竦むよ。

手と足の裏に汗が出るし体がぞくぞくしてる。

門は開いているというカフカの話を思い出したけど好奇心は猫も死。

首を締められた晩も朝日とともに開放されるんだ。

朝になれ、朝に。