しっぱなし話

どこか遠くの国の砂漠にサボテンは住んでいた。

そこの昼間は夏より暑くて夜は冬より寒い。

そんなサボテンが日本に来たら春が早朝で夏が昼間で秋が夕方で冬が夜でと一年間を一日と感じるんじゃないかと思った。

思うだけなら自由じゃん。

悲しむのも楽しむのも絶望するのも有頂天になるのも。

でもしっぱなしは自由じゃないのかな。

本の借りっぱなしも

狂いっぱなしも

真面目っぱなしも

生きっぱなしもダメだから死ぬのかな。

でも死にっぱなしは普通か。

お金の貸しっぱなしはいい場合もあるかな。でも借りている側も心苦しいか。

車にひかれた猫っぱなしは。

死んでいない場合。

過去を引きずりっぱなしということかな。

ごはんを出しても僕がいないときに出てきて食べて

いつも離れっぱなしで本棚の後ろで死んじゃった車にひかれた猫がいるよ。

だからずっと近寄っちゃダメかな、と思って 100 円の針々のサボテンを 13 個買って

その車にひかれた猫の周りにぐるりと並べたよ。

そうすれば僕は近寄れないはず。

その代わりサボテンを見て一年が一日だ、とか好き勝手に夢想したの。

あと 1 ヶ月に 1 回はサボテンに水をあげないといけないからその時にその車にひかれた猫をチラリと見るかも。

そんなこと許されるわけないじゃん!

サボテンが水を求めて枯れ死ぬ苦しみを受けて死ね!!