君にとってはどうか知らないけれど僕にとっては家に向かう橋の左手に火星が見えたよ。
立ち止まるとまた何を言われるか分からないから下を見るふりして歩きながら見た火星。
浮いているだなんて。
無数が音も立てず回転しながら楕円を描きながらだなんて。
しかも暗い中を。
ああ、それを言えば僕も同じ所をぐるぐるしながら同じ動きをしているにすぎないかな。
太陽が狂ったように照らす中でも闇のようなものかもしれないし。
そんな風に考えるとネリリしキルルしハララは
セックスしてぶっ殺して涙を流すことだと思ってしまうよ!
そして、地球があんまり荒れる日には火星の赤さが温いのだ、という黒い活字に救われたり。
ああ、車にひかれた猫の赤が憤怒ではなく、手に抱いていても遥か遠い火星に感じられる。