寝転んで本を読んでいたら片手のない車にひかれた猫がひらりと背中に乗ってのしのし歩いてくれた。
「あー、気持ちいい〜」と言おうと思ったのに略して
「きも〜」
と言ってしまい、ピタリと背中の動きが止まった。
「きも〜」では気持ち悪い、みたいじゃないか。
言い訳ではなく、何か態度で。いや、まずは弁解か。
とりあえずこの僕の強張った顔を見てくれれば理解してくれるはず、と振り返ったら
背中にいたのは 30cm くらいの丸々太った胴体に赤い目、口には車にひかれた猫を咥えて曲がった足は伸ばせば 1m くらいありそうな虫だった。
ああ、よかった。車にひかれた猫に言った訳ではなく、この気持ち悪いので。