本屋で名字の本を立ち読んだ。
普段、車にひかれた猫に名前を付けないけど、名前を付けたくてうずうずした。
でも名字だとよそよそしい。
だから名前にしようと思った。
でも名前の本は読まなかった ( マタニティ・コーナーには入れなかったから )。
タマ、ミケは思いついたけど後はラッシーとかパトラッシュとかチョビとかウィッシュボーンとかスヌーピーとかブーニーとかまさおとか犬の名前しか思いつかなかった。
だから「手」とか「足」とか「目」とか「口」という名前にした。
車にひかれた猫の「耳」が死んだ。
車にひかれた猫の「指」が死んだ。
車にひかれた猫の「歯」が死んだ。
まるで僕が死んでいくみたい。
ハッ!
これが名前を付ける効能か、と思った。
車にひかれた猫に「車にひかれた猫」という名前では見えないものが見えてきた。