兆の逃

ヒトが逃げるのは当然として空気も僕から逃げるから息苦しい。

生きた猫は目を見開いてさっと逃げるし鳥は飛び去っていつも足元にいる影すらどこかへ行った。

コンクリートに血の水溜りを作りぺちゃんこの猫すら滑るように逃げていき血は蜘蛛の子のように砕け散って逃げ去った。

地球も逃げるから僕は宙に浮く。

光も闇も温度も時間も逃げる。

僕の存在も逃げれば僕は存在しなくなって苦しまないのにそれだけが逃げない。