朝が狂

夜道。

家にいる車にひかれた猫が死ぬ前にクスリを届けないといけないから朝までには家に帰らないといけなかった。

でも、その途中で拾った腕の中の車にひかれた猫は朝には出血多量で死んでしまう。

朝が来れば一匹は死んでしまう。

朝に間に合わなければ二匹が死んでしまう。

朝が来なければ二匹は死なないのに。

信号と車で築かれたそびえ立つ山を這い登る。

僕の口に咥えた車にひかれた猫は混濁した意識によって親猫に咥えられていると勘違いしているといいな。

僕も電信柱に打ち付けられたり警棒で小突かれたりクスリを盗む手の幻覚に襲われるよ。

顎と荒い息と口の端から流れる涎だけが温かくて本当に痛い。

カラスが鳴き始めた。朝になってしまう。

カラスは上空を飛んでいるのに僕はカラスが鳴かないようにズタズタに引き裂こうとしている。

いつの間にかクスリも盗られたしもう朝だよ!

家にいた車にひかれた猫が朝日を浴びて白く光ってにんまり口で寄ってきた。

僕が死ねば僕の中では車にひかれた猫は二匹とも死ななかったな。