夜の不思議な時間に車にひかれた猫を拾いに出かけるといろんなのに出会う。
影のないのや、<の>がなくて地面に影だけのは結構見かける。
でも今日生まれてはじめて会ったのは僕の前に直立する影とその足元に<の>。
<の>は車にひかれた猫に興味があるみたいでそこの喫茶店に行こうと誘われた。
喫茶店は底で客は僕たち二<の>だけ。
喉が渇いているから氷だらけの氷河水じゃなくて、ジョッキに常温より少し冷やした並々の水を飲みたいけど恥ずかしいから我慢した。
<の>はこの店はたんぽぽコーヒーが美味しいんだよといって一緒に「甲殻類のカレー」を頼んでいた。
海老じゃない雰囲気。
<の>が食べるなら僕も何だか食べたくなって「本日のスパゲッティ」か「本日のパスタ」で悩む。
マスター ( 何の? ) に「本日のスパゲッティ」は何かと聞くとカレンダーを指差して「5/7 を入れたスパゲッティです。」
「スパゲッティです。」の「です。」が DEATH な気がして「本日のパスタ」にスルーする。
影は平面だから、カレーをすくって口元に運ぶと手か口か分からない。
足元の<の>をちらりと見ると床にぽっかりと穴が開き、そこに奥歯の虫歯まで見せてカレーが汚物のように丸見え。
これには尻尾だけの車にひかれた猫も驚いて生き返ってドアの隙間からフギャフギャ鳴きながら逃げていった。
足元ではなく目の前の目も鼻も口も分からない顔の輪郭だけの影を見るだけにした。
ご馳走してやると言われてそれを合図に喫茶店から二<の>で走って逃げた。
後日、野良猫と喧嘩している尻尾だけの車にひかれた猫がいて微笑ましかったです。