猫が一度もいたことのない場所。
たとえばこの部屋。
僕は洗われて渡された服だから僕の体に猫のおしっこの匂いも付着した毛もない。
心の中だけじゃ寂しいよ。
白一色の壁と天井の微かな凹凸の陰影や、シーツの皺から車にひかれた猫を探す。
指を丸めてそっと爪を研ぐ真似。
朝昼晩の食事が欠かさず出るからパンのみに生きるにあらずなんて思うけれど、
飢えていればこのパンが必要。
車にひかれた猫へのパンを体内に隠す。