開底

2022/10/01

静かな夜

世界は一台の車と二個の信号と三匹の猫とループした道路だけ

猫をひかないか目で追う

車が近づいているのに道路を渡ろうとしたら止めたり車が去ったら促したり

車が速度を上げて僕が追いつけない所で猫をひく

さらにもう一匹

この一匹だけはひかれないようにと思うけど僕が寝た隙に轢き殺す

車にひかれた猫裁判

弁護士は世界に僕はいないと主張

世界は車と信号と猫と道路だけだったと

検察は僕が寝たから車にひかれた猫になったと供述したと反論

証拠として 5 行上を提出

666 億人の陪審員が一斉に僕を睨みつける

警備員が貴様は死刑だと叫ぶ

僕は部屋の車にひかれた猫はどうなるのと呟く

裁判官は不規則発言はやめろと僕に馬乗りになって木槌で僕の頭蓋骨を何度も打ち下ろし砕く

あらゆるメディアは赤子も含めて全員が死刑では生ぬるいので終身拷問刑を求めていると報道

宇宙からも車にひかれた猫がかわいそうとメッセージ

僕は車にひかれた猫犯として有罪

弁護士は興奮した赤い顔で大勝訴の文字を掲げる

天国の上、地獄の下の牢獄で正座

罪という形に似た虫が這い回る

世界は車にひかれた猫がかわいそうと思っているけど

世界は車にひかれた猫がかわいそうと思っているか考える

それによっては僕は嬉しいし、悲しい