和菓死

2024-03-05

チェーン店や高級店や観光用の和菓子屋さんはあるけれど

素朴な個人の和菓子屋さんって減っている

良心的価格すぎてお店は清潔だけど古く暗く

666 粒以上の小豆を一瞬で広げて僕みたいな小豆を取り除く

そして手のひらで小豆を一撫でするだけですべての小豆はひっくり返り

また僕みたいな小豆が取り除かれていき美しい小豆の粒が並ぶ

片腕の老婆が捨てる小豆をもらい

片手で針を糸に通し、縫うときは体に布を当てて片手で縫っていく

端切れと小豆でお手玉を作り

片手で三個のお手玉と遊ぶ

何度かお手玉を放り上げると腕が疲れるのか手を床に置き

お手玉が落下するタイミングでまた腕を上げて掴んで放り上げる

僕が口を開けて眺めているとお手玉に誘われるけど

恥ずかしくて耳がぎゅううって痛くなって

不器用すぎる僕は逃げる

電車の終点駅でキセルして

バスも料金を払わずに走って逃げる

港で外国へ行く船に乗せてくれと頼む

たまに面白がって乗せてくれる

異国の地で一人旅の旅行者を襲って生活し

車にひかれた猫を拾って積み上げて家にする

強制送還されて

家まで二日かけて歩いて帰る

僕の好きだった 3 つの和菓子屋さんが消えいてた

お手玉をしていた片腕老婆は亡くなっていた

知っていた店やニンゲンは消え死に

変わらず車にひかれた猫が落ちている

もしくは痛さや怒りで唸っている