蒸留、情留

大きなペットボトル半分の水が飲みたい

池や川や井戸が涸れている

乾燥して白くひび割れた地面

木の棒で地面を掘っても水気なし

マグマが地殻近くまで来ていて

頭上の灼熱の太陽と共同して僕を挟んでいない?

海は涸らせまい

海の水を蒸留すれば飲めるよね

海を目指して力尽きて死ぬ僕たち

途中車にひかれた猫を拾う

裸の僕の皮膚にいやに毛がちくちくするね

車にひかれた猫が嫌いになっちゃいそう

水がないだけで?

死んだ腐敗した子供を抱く狂った女性がいる

僕にはまだ母と断定しない正気がある

大切に抱いていなかった車にひかれた猫を大切に抱き直す

3 人僕が死んで登った山頂から海が見える

まだまだ遠いね

でも近づいている

僕が海を目指すから死んだ僕たちは僕に殺されたんじゃないの?

猫に似た鳴き声の海鳥たちは魚を食べられて元気そうに空を飛ぶ

誰かの家の窓ガラスと海水で洗ったガラス瓶で作った道具で蒸留

時間

時間

水滴

ポトリ

そしてポトリ

またポトリ

波音が背中

海は涸れないけれど

涙はどうだろうね

もっとも悲しいことで涙が枯れたら

それ以下のことでは泣かなくなる

でも涙涸れてから数年して、ふと思い出して涙したり

歳を取り、それすら涙しないことが想像できるけれど

汲んだ海水に涙を入れて蒸留してみる

僕は海水も涙も喉を癒す水にできる

車にひかれた猫にとっての「蒸留」はなんだろうね