僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


家の窓から見たかった

黒い巨大な爆弾が落ちてきた。中にはぎっしり脳ミソが詰まっていて街は脳ミソだらけになってしまった。パートのおばさんが爆弾に脳ミソを詰めている姿を想像した。時給はいくらだろうか。自宅から近いのだろうか。

机に置かれた車にひかれた猫の頭蓋骨をノコギリで開いてスプーンですくう。24時間3勤交代で休みなく詰め込み続ける。そして一杯になったら爆弾を落とし、また詰め込みはじめる。腕が上がらなくなるまで。永遠に。


銀紙は張らない

壁の中から猫の鳴き声が聞こえる。弱いかすかな鳴き声。ぼんやりすると聞こえだす。座っていると聞こえだす。誰かが埋めたのだろうか。スプーンで壁を掘ってみた。漆喰が落ちていく。猫の鳴き声が狂ったようになる。この壁は猫なんだ。車にひかれた猫がコンクリートミキサーに入り込み、かき混ぜられ、こねられ、僕を囲む壁になっているんだ。僕は薬局に行って大きな絆創膏を買って壁一面に張り付けた。

首ガクガク

散歩から帰った。足がすっかり寒さで麻痺していた。ストーブをつけよう。ポケットの中の家の鍵を探す。

ない。

心臓が痛くなる。えぐられるように痛くなる。体中に這う血管にとがった塊が流れ出す。どこかで落としたんだ。今来た道を歩き出す。雪よ、今は降り出すな。足下は暗く、立っては下が見えない。4つんばで歩くことにした。手が寒さでちぎれそうだ。膝が痛い。今日はかなり歩いた。ポケットに手を入れたり出したりしていたからその時に落ちてしまったんだ。最後の手段で窓を破って入る方法があるがガラス代が馬鹿にならない。なんとしても見つけなくては。

ひっくり返った猫が落ちていた。外傷もなく、血も流れていない。持ち上げてみると頭がガクンと背中にくっついた。そして、その下に鍵があった。こんな偶然もあるんだなと驚きながらもこれは明日の日記に書こうと考えながら車にひかれた猫の頭をあらゆる方向へ回しながら帰りました。


大家には内緒

内臓ベロリン血がダクダクの車にひかれた猫を拾った。手足は綺麗だった。猫の手って可愛いよね。いわゆる肉球があって爪がチコッととがっていて。猫の手を持ってむき出しの内臓から流れる血に浸した。そして白い壁に押しつける。ふふふ。猫の手形。

5羽のカラスが猫食ってカー

5羽のカラスが車にひかれた猫をついばんでいた。カラスの邪魔にならない位置で眺めていた。あのカラスの中に優劣関係があるみたいだ。がつがつ食べているカラスがいて、周りをうろうろしているカラスがいる。そのうろついているカラスが食べようとすると幅を利かせているカラスが威嚇する。車にひかれた猫一匹じゃお腹も一杯にならないだろうね。1時間くらいしてカラスは飛び立っていった。骨や毛、散乱する血になった車にひかれた猫を見る。これは貴重だ。でも拾って持って帰っても意味がない。ここにこの形であることが素敵だ。脳ミソに焼き付けておこうとずっと見ていました。
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