僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


おはよう。世界。

朝起きた。歯をみがきに台所に立つ。あ、流しにダンゴムシがいる。脱出しようとごそごそと登るがどうしてもずるりと落ちてしまう。

ガシュガシュガシュ

歯をみがく。

ペッツ

口の中でわいた唾をダンゴムシにかける。

ニョロ

歯磨き粉をつける。

ゴシュゴシュゴシュ

歯をみがく。

ペッツ

泡泡の唾をダンゴムシにかける。

ガラガラガラ

コップの水を飲みうがいをする。

ペッツ

水をダンゴムシにかける。

ゴゴゴ

ダンゴムシが流されて排水口へ流れる。

ガチャガチャ

猫の食事を用意する。118円の1リットル紙パックフルーツジュースにパンの耳。

うろうろ

新聞を読みながら部屋の中を歩く。歩きながら新聞を読むので頭がくらくらする。なら、やめればいいのに。そう思う。だけどやめられない。車にひかれた猫が逃げまどう。安全地帯はないよ。だって、車にひかれた猫がいる所に歩いていっているんだから。

ガチャガチャ

猫の皿を洗いに台所へ行く。

もぞもぞ

ダンゴムシが排水口から這いあがってきてまた脱出しようとしている。

ガシャーン

猫の皿でダンゴムシをたたきつける。皿は割れる。ダンゴムシは死ぬ。手から血が流れる。

おはよう。世界。


傷跡

痛い。脈を打つ度にガラスで切った手がズキリズキリとする。学校へ向かう。

ギャン

車にひかれた猫が短く叫んで道路にたたきつけられる。首をつかんで持ち上げた。口からツーーッと血がたれて道路に血だまりをつくる。ポツンポツン。ツーーッと流れていた血が滴に変わった。ポツン。血が出なくなった。振ってみた。ポツポツと血が飛び散って服についた。

指に唾をつけて服についた血をごしごし拭いた。あ、朝切った傷跡がぶっくり膨らんでいて気持ち悪い。


僕は?

僕は風邪の人を知っている
僕は車にひかれた猫を知っている
僕は自分のことは知らない

僕は風邪の人に治ればいいと思う
僕は車にひかれた猫に申し訳なく思う
僕は自分に何をすればいいか分からない

僕は風邪にかからない
僕は車にひかれた猫じゃない
僕はだからといって自分が分かるわけじゃない


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