僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


えびちゅ

部屋にいる車にひかれた猫が床をぺしぺしと叩いているから見てみた。ダンゴムシをなぶっている所だった。食べるかなーと思って見ていたけれど食べなかった。その真剣な眼差しに胸がキュンとした。

ハムスターなら虫を食べるから便利だよな。でも、ハムスターは車にひかれた猫に食べられるからなぁ。

そういえば『えびちゅ』というハムスターマンガを借りた。『えびちゅ』の意味が分からなかったので辞書をひいた。載っていなかった。でも、『葡萄茶』と書いて『えびちゃ』と読むことを知ったのは勉強になった。


ガチョーン

あっはーん。なんで部屋にダンゴムシがいるの?いやん、バカン。

と思っている人がいるかも。こんにちは。■■です。

僕の部屋は一階の一番端っこです。それでもって扉の立て付けが悪くて扉の下に透き間が空いています。そこから入ってくるのです。確認しました。1時間に4匹入ってきます。部屋が暖かいから入ってくるのでは、と思い

部屋が暖かいじゃあーりませんか
バウバウ
訴えてやる
カッター買った
コマネチ

とか寒いことをしてみました。効果ありませんでした。

部屋にいる車にひかれた猫たちの腹を空かせてダンゴムシを食べざるをえない猫にすればいいんだ、と思いつきました。僕だけが食べ物を食べているのはずるいので僕も我慢しました。

…ダンゴムシは苦いです。


見つからない

道に猫の叫び声が落ちていた。「ギ」と「ア」と「ー」と「!!」を拾った。どこかに「ャ」と車にひかれた猫がいるはず。ああ、あった。頭と足と胴体と尻尾と「ャ」を拾った。でもまだ左目と脾臓と猫の安心が足りない。左目と脾臓は見つかった。道路には車が排気ガスをまき散らして走っていた。

四次元の光

僕が野グソをすませて内股気味に歩いているとびっこの車にひかれた猫がついてきた。この車にひかれた猫、僕が何か言うと必ず返事をするかのように鳴いてくれる。

「雪が家の陰には残っているね」
「にゃー」
「フライドグリーントマト食べたいね」
「にゃー」
「昔々ジジィとババァが住んでいたよね」
「にゃー」
「ロケット発射だね」
「にゃー」
「宇宙人のサイン持ってるよ」
「にゃー」

といった感じ。でも何だか変な感じ。鳴きすぎる。それに歩くのに首を動かしすぎる。

ひょいと猫の脇に手を入れて持ち上げ、猫の目玉をのぞき込む。

新田次郎がキチガイの目は四次元の光を宿していると言っていた。きっと、この車にひかれた猫の目玉がそれだ。壊れているんだ。壊されたんだ。車に。


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