僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?
4月の雪
昨日雪が降った。寒いのは嫌いだ。どこかに車にひかれた猫が傷ついた体を抱えてうずくまっているはず。車にひかれた痛さだけではなく寒さも加わってさらに不幸だ。あまりに不幸で車とかに怒る前に悲しくなる。
8月の雪
オーストラリアでは雪かな?オーストラリアは蝿が多いそうだから車にひかれた猫に蝿がびっしりとたかっていそうだね。びっしり。そうか。でも冬だから蝿はいないか。コアラだよ。コアラがびっしりたかっていそうだね。びっしり。
12月の雪
ここは北海道だからクリスマスの頃にはもう雪は高く積もっている。また車にひかれた猫が雪の中に埋まる季節。でも、夏のように腐乱した死体をさらさなくてもいいから猫にとっては不幸中の幸いかも。猫ってすごくそういうの気にするから。
16月の雪
16月といえば宇宙からの電波雪が一番強い月。おまけに16月には今まで存在しなかった4号室の扉が現れたりしてね。扉を開ければようこそ地獄へ。いや、天国か。分からない。この世界の縮図なのかも。遥か向こうまで無限に車にひかれた猫が白いタイルに並べられている。部屋の上を見れば透明な青い空。1月から15月までの空ってなにかドームのような天井を感じるけれどこの季節になると宇宙との境目がハッキリせずにスコーンと抜けた空だから好き。地球に閉じこめられた感じがしないから。
4号室に入って1月まで待てば1月から15月まで僕はこの世界に存在しなくていいからすごく魅力的。でも、あまりに車にひかれた猫が綺麗に並べられているからその調和を乱すことを拒絶する見えない力で僕は口を開けて「ちれー」なんて言って毎日眺めているだけ。電波雪を浴びながらね。
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