僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


首チョンパ

首チョンパという言葉をふと思い出した。スパンとギロチンか何かで美しく切断された状態が連想される。

今僕の足下に落ちている猫の首切断面はボロボロだ。車に巻き込まれて引きずられてブヅリといった感じ。交通事故や銃殺されてへぼへぼな死体を綺麗にしてくれる仕事があるらしい。この車にひかれた猫の切断面も綺麗にしてほしい。

ところで、体はどこ?


僕と僕

放射能とか水銀とか電波に怯えて暮らすのはもう嫌だ。と思ってももう後戻りはできない。こんなにいい生活をどう捨てられるというのだ。といった感じ。

こんなことを考えるなんて疲れているか暇なのか鬱なのかのどれかだ。

「バカだからだよ。けけけ。」

鏡の中にいた僕が言う。脱ぎ捨ててあったシャツで鏡を隠した。

「僕から逃げる気?」

うるさいな。

「隠しても声は消せないよ。バカだねぇ。ケケケ。」

今度の「けけけ」は「ケケケ」といった感じ。そんな風にぼんやりと聞いていた。まだ何か言っているけれどぼんやりを楽しんでいる僕には僕が何を言っているのか脳で処理できない。アンニュイなんだな、と思った。けけけ。アンニュイだって。あ、けけけと笑ってしまった。でも、ぷぷ、アンニュイだって。アンニュイ発言でまるまる1分くらい笑ってしまい、その後の15分は思い出しては笑っていた。

そんな気持ちで外に出かけたから外は悪意を持って僕に向かってくる感じがした。ぐにゃりと僕に近づいてくる感じ。家とか空気とか空とかが。だから僕は外が変に僕に近寄らないよう腕をぶんぶん振って威嚇して歩いた。

腕を振るのをやめて地面で伸びている車にひかれた猫を拾った。さっきまで腕を振っていたから腕がじわーーーんとしている。その腕に冷たくて動かない毛だらけの小さな死体がいる。目を開けていたから閉じてみた。指が小刻みに震えている。随分腕を振り回していたんだな。それがおかしくて何分も一人で笑っていた。人が歩いているので笑いをこらえるのに大変でくっくっくっくっく…と笑っていた。

笑っているということは鬱じゃない。じゃ、疲れているか暇なのかどっちかだ。別に暇じゃないから残りは「疲れている」だ。でも、別に疲れてはいない。じゃ、なんだ?ああ、バカだからだよ、とさっきの声がする。むかつくなぁ。よく見ると腕の中の車にひかれた猫の口元がにやりと笑っているように見える。むかつくなぁ。外は飽きもせず僕にぐにゃりと近寄ろうとしているし。家の中も放射能と水銀と電波だし。死ね、ということなんだろうか?むかつくなぁ。むかつくなぁ。

むかつくのは体に悪いから楽しい歌でも作ろっと。

楽しくしいきましょう
爽やかにいきましょう
朗らかにいきましょう
大らかにいきましょう
いきましょう
いきましょう
電波の空へ
水銀の海へ
放射能の世界へ

手と手をとって
隣の人はアイツかも
気にしない
気にしない
楽しくいきましょう

いきましょう
いきましょう
電波の空へ
水銀の海へ
放射能の世界へ

手と手をとって
隣の人は息が臭いかも
気にしない
気にしない
爽やかにいきましょう

いきましょう
いきましょう
電波の空へ
水銀の海へ
放射能の世界へ

手と手をとって
隣の人は血まみれかも
気にしない
気にしない
朗らかにいきましょう

いきましょう
いきましょう
電波の空へ
水銀の海へ
放射能の世界へ

手と手をとって
隣の人は死体かも
気にしない
気にしない
大らかにいきましょう

いきましょう
いきましょう
電波の空へ
水銀の海へ
放射能の世界へ

電波の空には車にひかれた猫が血を吐きながら舞い
水銀の海へ流れ着く
放射能の世界が埋まるまで
埋まるまで
埋まるまで
そう
埋まるまで


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