僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


靴猫

川で魚を捕っていたので靴がすっかり濡れてしまいました。靴と靴下を脱いで捕ればよかったと後悔しました。結局一匹も捕れなかったし。

歩くとグシュッグシュッと靴が鳴きました。明日もこの靴履くのやだなぁ。じっとり濡れているし。

新聞紙を突っ込んで乾かそうと思ったけど昨日血に濡れた車にひかれた猫を14匹拾って敷物にしてしまい一枚もないことを思い出しました。

さっき拾ってきたこの車にひかれた猫の毛は乾燥しているからこの猫を突っ込んでおけば乾くかな。入りきらないのでナタでちょんぎって入れておきました。

長靴をはいた猫を思い出しました。プッ。この猫は靴から顔だしているよ。手がはみ出ているし。


宇宙も一杯になったら…

車にひかれた猫を外から拾ってきて家に置く。どんどん猫で部屋が一杯になって窓や扉から溢れ出る。それでも僕は拾ってきて置いてゆく。そのうち日本が車にひかれた猫で一杯になるんだ。そしてもしかして僕が不老不死だったら数千年後には地球から車にひかれた猫が溢れ出てしまうかもしれない。そうしたら僕はどこに住めばいいんだろう。少し心配になるけれど今日も3匹の車にひかれた猫を拾いました。

そのお金は僕のです

壊れたベビーカーが落ちていました。持ち上げてがんがん地面にぶつけてみました。がんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがん。ばらばらになりました。壊れたベビーカーの金属棒がマンホールを開けるのにちょうどいいL字型をしていました。早速マンホールをがっぱんと開けてみました。奥が見えない暗い闇。不思議な吸引力を持つ黒い穴。

僕は肩から落ちていました。下水道の中に。痛い肩をさすりながら立って周囲を見ました。遥か頭上の太陽光でぼんやりと辺りが見えます。車にひかれた猫が下水道を埋め尽くしてやたらゆっくりと流れていました。どの顔もニンマリと笑っています。知らなかった。僕の足下には数無量大数の車にひかれた猫が流れていたんだ。ゆっくりと。みんな笑っている。海に行くんだ。きっと。

僕も臭い水の中に寝転んでみました。僕は流れません。僕の横を笑い顔の車にひかれた猫たちがゆっくりと流れていきます。うげ。笑った僕の口に甘いような苦いような臭い水が入りました。頭がぐらぐらします。

笑った猫の顔は流れることができない僕を馬鹿にしているようにも見えます。きらいだ。こんな所。

ぬるぬるする梯子を上がって僕は地上に出ました。その時数万円落としたので浜辺でお金を見つけたらそれは僕のです。僕に返してください。


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