四国犬は別にいやいやをするわけでもなく黙っていました。
「ガガガ。鼻がすっとしてますねー。ガガガ。」
右にいた猫の鼻を押してみました。ブニャーッ!!と鳴いて顔をしかめて怒りました。
「ガガガ。鼻がすっとしてますねー。ガガガ。」
今度は左にいた肺をのぞかせている車にひかれた猫の鼻を押してみました。四国犬みたいに無視されました。
「ガガガ。鼻がすっとしてますねー。ガガガ。」
次は押入の中にあるコピーロボットの鼻を押してみました。僕になりました。
うわわ。上で誰かがうろうろ歩いている。うわ、うわ。怖い。うう。
僕の心臓のミクロ振動やミクロ音で感づかれるかもしれないから手で背中と前から心臓をぎゅーっと押さえつける。心臓よ動かないでくれ。殺される殺される。
棺桶の上にいた何かがひらりと降りてトトト、と走っていく音がした。
ブギャーーーーーーーーーーーッツ!!
鋭い叫び声に体が飛び上がって僕は棺桶ごと倒れてしまった。蓋が開く。ポリバケツだった。車にひかれた猫がカッと僕を見ている。うまく心臓を止めている。空を見る。上に誰かいるんだ。