虫。伝染。そんなことを考えたら僕のすべての血管に黒くて足が8本あって赤い目をもつ丸い3ミリくらいの虫がびっしり渋滞して流れている気がした。ぶしゃあと僕が血飛沫をあげると何百万のその虫が絨毯の上を四方八方うじゃうじゃと這い出してあるものは僕の体を這いのぼってきてまた体内に入ったり爪や目や舌やへそに黄色い卵を生み出した。その卵が孵化してまた僕の部屋を這いまわって僕の沢山の死んだ車にひかれた猫に卵を生んだ。その卵からまた孵化して外に出て人々に生みつけて孵化して卵を生んで孵化して卵を生んで孵化して全人類は黒い虫で死滅した。あとは部屋で座って静かに笑っている僕と車にひかれた猫とヒトを除いた動植物だけのユートピアになっていた。
多分、多分僕が漠然と未来を感じる僕が支配した世界はこうやってできるのかもしれない。いつのまにか僕は車にひかれた猫の口に舌をいれていた。
僕はダダダとポストに駆け寄り、どっこいしょとかかんで鞄からがちゃがちゃとナイフを取り出した。くっ。計画に障害が出た。服の上からではナイフで腹が切れない。ベルトを外してシャツのボタンを外してシャツをまくる。ああ、みんなが見ている。持ち主が現れる前に作業を終えないと。腹にナイフをざっくり突き立てて上にナイフを引っ張る。ぐぅぅぅ。計画にはない激痛だ。どばっと自分でも驚くほど血が飛び出た。歩行者が叫び声をあげる。いつもは無視するくせして僕が何かしようとするとすぐに邪魔をする。
目を覚ますと病院のベットだった。僕は焦って窓に鉄格子があるかチェックする。大丈夫だ。ない。壁も固そうな壁だし拘束服も着ていない。医者が来てどうして腹を裂いたのか聞いてきた。馬鹿かこいつ。誰がこの計画犯罪を告白するか。計画犯罪は罪が重いんだぞ。