僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


きちきち言った

遺伝子がきちきち言っていた。本当に遺伝子がきちきち言っているのか知らないけどそんな感じがする。きちきち言う遺伝子が僕に命令を出している。きちきちきちきち。僕は分かったと誰にも聞こえないような小声で言ってきちきち言いながら歩き出してきちきち言いながら停止線を超えてエンジンふかしている車のボンネットをぼんぼん叩いた。運転手がハンドルを持ちながら青い顔をして僕を見ている。遺伝子のきちきち言う音が大きくなってきた。走ればこのきちきち音から逃げられる気がして僕はダッシュした。後ろで運転手が僕にバカヤローと言っている。きちきちうるさい遺伝子は僕の頭から目玉から腕から首から聞こえる。きちきちきちきち。うるさいうるさいうるさい。車にひかれた猫が電信柱の横に落ちている。僕は車にひかれた猫を拾って耳にあててみた。車にひかれた猫はきちきち言っていない。何も言っていない。きちきち言う遺伝子を忘れるために僕は何も言わない車にひかれた猫の静寂に神経を集中させた。
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