僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


僕の話聞いてる?

一仕事終えて僕は知らない街を歩いていた。あ、ペットショップがある。ペットという言葉は好きじゃないけど、まあとにかく中を覗いてみることにした。

可愛い子犬や子猫、うさぎ、ハムスター、鳥、熱帯魚、トカゲ、店主などが並んでいる。みんな立派な値段だね。

客がだれもいないので店主が僕に話しかけてきた。何か飼っているの?と聞くからたくさんの猫と住んでいると答えた。犬も欲しいんだけど、庭がないから一緒に住めないんだ。北海道は安い値段で土地が買えるから自分の庭で鎖をつけずにたくさんの犬と暮らしたいと言った。猫が嫉妬しないか心配。あと猫が子犬をいじめそうで心配。かといって成犬をもらうと逆に猫をいじめそうだしね。保健所で殺される犬をたくさんもらうから動物にお金を払う気はないよ。でも保健所にいる犬は大人が多いんだよね。保健所が殺すんじゃなくて保健所に持ってきたその犬の持ち主が殺すんだよね。保健所の職員じゃなくて犬を持ってきた人が殺せばいいのにね。なんて卑怯なんだろうね。犬とか猫とか捨てた人は殺しても構わないよね。昨日猫を車で山まで持ってきて捨てて車でひいて帰ろうとしていた人を見たんだよ。車にひかれた猫を拾って僕は追いかけたよ。相手は車だから追いつけなかったからナンバーを控えて今日その家へ行ってきたよ。泣いて謝っていたよ。なんで僕に謝るの。猫に謝りなよ。でも猫は死んだからもしあるなら死後の世界で謝りなよと僕は昨日考えたかっこいいセリフを言って撲殺しておいたよ。僕鈍器が好きなんだよ。それでもって死後の世界なんか信じていないよ。そういえば車って鈍器の部類かもね。でも車は大嫌いだよ。猫をひいて走り去るんだよ。速く走れるからだよね。逃げられるという意識があるからだと思うよ。店主さん、僕の話聞いてる?僕今その車にひかれた猫持ってるよ。ほら、まだ死んだばっかりで血が乾いていなくて臭いけど可愛いよね。表情が恐怖でひきつっているけどそこがまた愛嬌あるよね。僕の話聞いている。あ、お客さん来たね。じゃあね。


じっとずっと

横腹から血をどくどく流す車にひかれた猫を拾った。家に持って帰って机の上に置いた。横腹をずっとなめていた。部屋の中はすごく寒くて僕は椅子にじっと座っていた。少しでも動くと寒いからじっと座っていた。おしっこがしたくなった。でもトイレに行くの寒いから我慢した。おしっこすると熱が出て寒いから我慢した。車にひかれた猫は横腹をずっとなめていた。僕は寒いからじっと座ってじっと見ていた。膀胱が痛くなる。末端が凍っていく。猫が横腹をなめている。死んでしまえば楽なのに、猫も、僕も、ここにいる。

猫溜り

僕の部屋、冷蔵庫の横が暖かいから猫溜りになっている。横腹をなめていた猫はもう寝てしまった。僕は冷蔵庫横の猫を横目で見ている。首動かすと寒いから横目で見ている。僕の視線に気づいた灰色猫が僕の目を見る。光った目。怖いけど綺麗。僕は目を細める。そうすると灰色猫も目を細める。目を細めた猫の顔って憮然とした顔で滑稽。灰色猫がまた頭を体にうずめる。猫溜りは曲がった足が飛びだし、顔半分がケロイドの猫が横たわり、後ろ足のない猫が寝そべりでなにか一つの地球外生物みたい。車にひかれた猫という共通点で結び付き、お互いの体で暖を取り、不自然な体で集合する。地球外生物じゃなくて巨大な車にひかれた猫に見えてきた。

歓喜の叫び

机の上の、車にひかれた猫は、横腹から、骨と内臓をむき出しにして、静かな寝息をたてている。僕の、膀胱は、限界で、きりきりきりときしんでる。猫の静かな寝息すら、僕の膀胱に響いてきて、僕は汗をたらしてる。うう、トイレに僕は立ち、うう、トイレで用を足す。ああ、我慢しすぎるとおしっこ気持ちよくないや。

体がぶるると震え体内の熱が尿と共に出ていってしまった。また椅子に座って車にひかれた猫を見る。あれ?さっきどうやって座ったんだっけ。あの暖かい座り方は。うーん?あれ?まあ、いい。そのうち暖かくなる。

猫のまぶたがぐりぐり動いている。高速眼球運動(←最近の僕の口癖)だ。触りたい。触らせて。触るね。脇の下が寒くなる。でも、いい。触るためなら。横腹も寒くなる。でも、いい。触るためなら。ああ、ぐりぐりしているよ。ぐりぐり…ぐりぐり…。うひゃー!!

思わず叫んで横腹猫と猫溜り猫を起こしてしまった僕でした。ごめんなさい。


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