僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


コンビニへ弁当を買いに行くことにした。扉の鍵を閉める。金属のがちゃがちゃいう音を聞いて振り向いた。病的に痩せた黒い馬にまたがり、くすんだ銀の鎧を身につけた騎士が槍を持って立っていた。騎士は腰に槍を固定させる。甲冑で顔が見えないが僕を見ているのが分かる。向かってくる。僕を狙っている。僕は目玉を大きく開ける。避けることを考えつかなかった。

ザグリ

肋骨をへし折って心臓に槍が突き刺さる。

ガチン

槍の先端が僕の体を貫通して扉に当たる。

ベギベギ

槍は扉を突き破る。2メートルはありそうな槍の半分が僕を突き抜けて後ろにある。騎士は馬から降りてさらに槍を突き立てる。ズブズブと槍が胸に沈んでいく。騎士と僕の距離が30センチになった。甲冑の隙間から見える顔は真っ黒に焦げた隙間から赤い赤い肉がのぞき黄色の目をした車にひかれた猫。僕が燃やした車にひかれた猫。にたあと車にひかれた猫が笑った。

心臓の上に今日拾った車にひかれた猫が乗っている。うなされていた僕を薄目を開けて見ている。布団から降りてくれ。


僕は、本当に…

心臓を突き刺す車にひかれた猫騎士の夢を3回見たところで僕は今夜眠るのをやめにした。そういう時にかぎってやたら眠い。熱いシャワーを浴び、冷水で顔を洗って水道水を飲む。椅子に座って読みかけの本を読む。何か違和感を感じる。まだ頭に霧がかかっている。部屋の四隅がぼんやりとしている。目が眠たくて痛い。時計を見ようとするが針も文字盤も読めない。

僕は、本当にシャワーを浴びたか?
僕は、本当に顔を洗ったか?
僕は、本当に本を読んでいたのか?
僕は、本当に椅子に座っているか?

僕は、扉の、鍵を、かけている。そして、振り向く。そこには、騎士が、いる。


今は

脂汗がすごい。シャワーを浴びる。目が覚めてしまった。今度は夢じゃない。

部屋の掃除をすることにした。雑巾に水を濡らして本棚やカーテンレール、冷蔵庫の下を拭いていく。夜中なので音を立てず部屋を拭いていく。床に黒い塊があった。拭く。とれない。強く拭く。雑巾が赤くなる。古い血の塊だ。スプーンではがすことにした。ボロボロと血の塊がこぼれる。手でかき集めてごみ箱へ捨てる。以前、ここにまだ血の流える車にひかれた猫がうずくまっていたのだろう。

カーペットのホコリをガムテープで取ることにした。ガムテープに猫の毛がつく。様々な色の毛がつく。ああ、いろいろな車にひかれた猫がいた…。寂しくなって冷凍庫を開ける。ここには炭化して区別のつかない黒い猫の首しかない。


ルールくらい守れ

停止線を超えて車が止まっていた。そのタイヤの下に車にひかれた猫がいる。僕はブロック塀のブロックをつかんで投げつけた。ブロックはフロントガラスを突き破って運転手の顔右半分を潰した。運転手は倒れてクラクションを鳴らし続ける。開いた窓の穴から手を入れて運転手を椅子に倒す。クラクションは鳴り止んだ。車を押す。動かない。僕は周囲の人にタイヤ下の車にひかれた猫を出したいから車を押してくれと頼んだ。誰もが無視して走っていく。

なんとか車を動かして車にひかれた猫を取り出す。チューブのようにひねり出された内臓をポケットに入れ車にひかれた猫を片腕に抱き僕は家へ帰った。


殺してやる

猫よ。車にひかれたらべっとり血をつけておやり。そうしたら僕がその滴る血をたどって車を捕まえてやるから。
車にひかれた猫よ。君の牙を抜かせておくれ。そうしたら僕がその牙で運転手の目玉を潰してみせるから。
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