僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


バランス

雪が融け始めている。自転車で走っている人もいる。ぐしゃぐしゃの雪に僕の足が沈んでいく。何かを踏む。車にひかれた猫を踏む。取り出して水気をはらう。それでもぐっしょりとぬれた猫を手に提げて家に帰る。ドライアで乾かす。寝ていた毛がばさばさと揺れる。乾いてきた。でも肉がぐぢゃぐぢゃだ。ぐっと掴んでみる。ぐずりと肉が崩れる。猫の顔を手で包んでみた。ぐっと力を入れて掴んでみた。持ちあげる。肉がずるずると剥がれていく。白い骨が見えてきた。へばりつく肉を剥す。綺麗な骨が見えてきた。体には肉と毛が残り、頭は骨だけになった。バランスがとれていない。体の肉もそごう。内臓が見えてきた。骨と内臓というのもバランスがよくない。内臓も取り出した。ああ、でもこれではただの骨になってしまう。それはつまらない。肉と骨のアンバランスがよかったんだ。そうか。そうだったんだ。

2月29日の思い出

2月の29日。4年に一回の日。何だか変な感じだ。去年にはなかった日。その前の年にも。そしてその前の年にも。来年にもない日だ。2月の29日に2月の29日を思い出すことができるのは4年に一回だなんて。今日のうちにおもいっきり思い出しておかないと。えーと、4年前、ナニをしていたかな…。

ぐわぁぁぁあぁぁああぁあ…
ぎえぇぇえええぇぇえぇえええ…
うぬぅぅうぅうぅうぅぅうぅぅう…

お、思い出すんじゃなかった。ああ、うう、ううう…。思い出の中の車にひかれた猫が赤黒くドロドロと湧き上がってきて臭いとともに甦ってくる。僕の体からずるりと這い出してきて下品に脳ミソの中で笑っている。部屋の中をぶんぶん飛び回って汁を飛び散らしている。一度思い出した記憶が止まらない。消そうとしても時間がかかる。ゲロを吐いている。だからどうした僕ドラえもん。君の目玉に恋してる。お前が猫を食べている。口からヨダレがたれている。どんな記憶か言ってごらん。言えない記憶を抱えて死にな。せめてそのこと書いてやれ。だから助かるわけもなし。そのまま悶えて死んじまえ。


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