僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?
ヒトミノマンゲツ
僕は自分の白い息を見ながら何も考えないで散歩をしていた。散乱した内臓のけばけばしい色に僕は元の世界へ戻された。血まみれの車にひかれた猫をかがんで眺める。まだ僕はぼんやりとしているみたいだ。彼女は白い息を吐いていない。小さな心臓を人差し指で触ってみた。動いていない。死んでいるの?尋ねてみたが答えない。やや飛び出た彼女の黒い瞳にぽつりと満月が映っている。そう。綺麗な満月だよね。
夜。満月。灰色の雲。冷たい空気。車にひかれた猫。静かな街。私。
ヒトミハドコミル
雲が増えてきた。みるみる夜空を覆っていく。そして一面の灰色の雲になった。突然雪が降りてくる。僕の体が一回ぶるると震えた。足が冷たい。歩き出す。冷たい足がキンキンと痛い。遠くから車の音が聞こえてきて僕の視界に入って猫をひいて視界から外れて音が遠ざかって消えていった。車にひかれた猫を抱き上げる。暖かい体ががくがくと震えている。血がどんどん溢れて僕の足を濡らす。暖かい。猫がにゃーと鳴いた。僕もにゃーと言ってみた。それに答えるようにもう一度猫がにゃーと鳴いた。その声がさっきより小さくて僕はにゃーと言うことができなかった。猫はがくがく震えたままどこかを見ていた。そして目を開けたまま動かなくなった。僕は猫の見ていた方向を見れなかった。
ヒトミニモキス
人が夜の道を歩いてきて冷たくなった頬にするキスが好き。
猫にキスをするのは好きじゃない。臭いし、毛があるから。でも、猫にキスをしてしまうことがある。せずにいられない時がある。臭くて毛が唇にあたっていやなのを知っているのに。車にひかれた猫って悲しすぎる時がある。そんな車にひかれた猫にキスをしてしまう。今晩の猫はみんな悲しすぎるよ。嫌い。でも、好き。
追伸
「元気ですか?」と僕に聞いてくれる人へ
元気です。
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