僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


救い

黒猫が道路で立ちすくんでいた。赤い車が近づいてくる。ドスン。正面衝突。黒猫は吹っ飛んで道路の上に落ちる。横たわった車にひかれた猫を赤い車がまたひく。グシャーンと吹っ飛びまた赤い車の前に落下する。そして赤い車がまたひく。

永遠に車にひかれた猫はひかれ続けることはない。車にひかれた猫はどんどん小さくなっていくから。肉が飛び骨が砕け車にひかれた猫は何が何だか分からないボロに変わっていくから。そしてただの肉片になった時にもうひかれない。後続車に踏みつけられるかもしれないけど。ああ…救いがない。風化するまで。


目玉の指紋

寝返りをうつと車にひかれた猫と目があった。死んでいた。目を閉じさせようとまぶたを人差し指で押さえてさげた。寝たままやったせいか手元が狂って指が車にひかれた猫の目玉に触れてしまった。指紋が残った。ティッシュで拭けばいいのだろうか。余計なことをして目玉をグシャグシャにしないようにそのまままぶたをさげた。

気になる。まぶたの裏の指紋のついた目玉。手の届かない腹の内部がむず痒い感じ。気になる。

うがーーーーーーーっ!!

気になるっ!

猫のまぶたの上に指を乗せてグルグル回した。これで指紋が拭けたか?まぶたを開けてみる。うぬぅ。目玉の指紋は消えかけているがグルグル動かした跡が波のように残っている。ますます悪いことをやってしまった。つまり「余計なことをしてグシャグシャにする」というやつだ。

うがーーーーーーーっ!!

気になるっ!!

こうなったら最後までやるしかない。うーん、と考えてみた。すっかり眠気も覚めた。僕の考えついた方法は舐めること。うまくいった。なんだか官能的だった。やーね。


カラスのご馳走

パンを買いに外へ出た。カラスが車にひかれた猫をついばんでいた。カラスは僕が来たもんだからバサバサと電線の上に移動した。僕が通り過ぎるのを待っている。警戒しながら。奪いやしないよ。

カラスも十分なご馳走にありつけたことだしなんだか僕もパンじゃなくてもっと豪華なものが食べたくなった。ということで天丼を買って帰った。

カラスの食事を邪魔したくなかったので違うコースを通って帰った。だからあの車にひかれた猫がどうなったか分からない。どうなっただろう。今日の学校帰りに楽しみが一つできた。


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