僕を取り囲む私を観察した不定期日記で自分は誰?


そうくるか

月が細い。寒い。息が白い。暗い。走れば体が暖かくなると思って走った。十字路が見えてきた。車の向かってくる音がする。かまわず十字路を飛び出した。車が急ブレーキをかけた。後ろで車がクラクションを鳴らしている。ぐひゃひゃ。びっくりしただろう。

ギャン!!

すごい声がした。驚いて体がビクンとした。仕返しされた。道路に車にひかれた猫が転がっていた。


やになるね

車にひかれた猫の腹からドクドクと血があふれている。すごい量だな。僕寒いからもう帰りたいよ。はやく血、止まらないかな。このまま持って帰ると血が服につくから嫌なんだよ。足が冷たくなってきた。動かないと寒いから車にひかれた猫のまわりをグルグルと回って血が止まるのを待った。血はまだドクドクと流れている。雑巾のように絞ったらジャーッと血が絞り出されていいかも。ひょいと首をつかんで持ち上げる。どことどこを持って絞ろうか。

脇と腰を持って絞ることにした。

ぎゅっつ

ビュッ!

血が勢いよく噴射されてジーンズについた。なんでこうなるんだろう。


ゼンマイ回る

ルーズリーフの紙を買いに行った。文房具コーナーの横はおもちゃ売場だ。そこにピンク色のうさぎが笛をくわえてシンバルを持っていた。背中についたゼンマイを巻いてみた。

ピッピッピッ、ピッピッピッ、バンバンバン、バンバンバン
ピッピッピッ、ピッピッピッ、バンバンバン、バンバンバン

8回繰り返して止まった。またゼンマイを巻いてみた。

ピッピッピッ、ピッピッピッ、バンバンバン、バンバンバン
ピッピッピッ、ピッピッピッ、バンバンバン、バンバンバン

さっきとまったく変わらない。機械だ。機械ピンクうさぎだ。

店の中にいても外の車が走る音がする。車を造る。人が乗る。猫をひく。僕が車にひかれた猫を拾う。うんこして寝る。繰り返しだ。繰り返し。僕もみんなも地球も電波も宇宙も繰り返すだけ。同じ事を。壊れるまで。みんな機械だ。そうか。機械なんだ。そう思ったところで変わらない。繰り返すだけ。機械だから。


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